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「後は宜しくお願いしますね。それでは」
そう言い残すと、男性は部屋から立ち去った。この際、アランは呆気にとられた様子で彼を見送り、それからマクシムの方へ顔を向けた。
「それじゃ、始めましょうか。ここに長居するのも不快ですし、やるべきことをして休憩にしましょう」
淡々と言葉を発すると、マクシムは拘束された男の背後を見やる。この時、彼の目線の先には金属製の棚が在り、マクシムは静かにその方へ向かって行った。
アランは、椅子に座らされた男を気にしながらマクシムを追い、二人は武骨な棚の前に立った。その棚の高さは彼らの目線程で、円柱状の容器が幾つも並べられている。
また、その液体の色は濃い紫色や黄色で、開け易さを考慮してか蓋には無数の溝が刻まれていた。マクシムは、そのうち濃紫色の液体が入った容器を棚から出し、アランに手渡す。
「消毒液です。ひとまず持っていて下さい」
そう言ってから、容器が置かれていた棚の奥に手を伸ばし、マクシムは銀色をした箱を取り出した。彼が取り出した箱は四角く、動かす度に甲高い金属音を立てている。
マクシムは、その箱を左手に乗せるとアランを見つめ、それから右手の人差し指を蓋に当てた。
「これ、落とさないように注意して下さいね。中に刃物が入っていますから、怪我をしかねませんし。それに、落下の衝撃で、器具が壊れるかも知れませんから」
そう言って片目を瞑り、マクシムは右掌を蓋に載せた。
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