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一つの仕事を終えた二人は、共に食堂を訪れていた。アラン達の前にはトレイに乗せられた料理が在り、マクシムは何時もと変わらない様子でそれを口へ運んでいる。
しかし、アランは食が進まないのか、パンを手に持ったまま溜め息を吐いていた。彼は、時折パンを口に運んでは、それをスープで流し込んでいる。
とは言え、湯気の立つ肉料理には全く手を付けておらず、アランは料理の半分以上を残して口元を押さえてしまう。その後、彼はそれ以上の料理を口に運ぼうとはしなかった。
「食欲が出ませんか?」
彼の様子に気付いたのか、マクシムは心配そうに問い掛けた。一方、アランは苦笑しながらマクシムの顔を見つめ、小さな声で話し始める。
「ええ。どうにも食欲がわかなくて。勿体ないし、食べなくては……とは思うのですけれど」
そう言って目を瞑り、アランは細く息を吐き出した。この時、アランの話を聞いた者は小さく頷き、それから自らの考えを話し出す。
「食欲がわかないのは、珍しいことでは無いですよ。特に、あれを見た後では無理もありません。それが長く続くようであれば、医者に診せた方が良いとは思いますが」
そう言って立ち上がり、マクシムはアランを見下ろした。
「飲み物なら大丈夫ですか? 大丈夫であれば、私が取ってきますから休んでいて下さい」
そう問われたアランと言えば、申し訳なさそうに言葉を発する。
「気を遣って頂きありがとうございます。飲み物なら大丈夫だと思います」
それを聞いたマクシムは頷き、飲み物を用意する為に席を離れた。彼は、それから数分して席に戻り、マグを持ったままアランに問い掛ける。
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