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「まだ、駄目そうですか?」
それを聞いたアランと言えば、微苦笑してから答えを返した。
「情けないことに、駄目なままの様です。良い年なのに恥ずかしい限りですよ」
そこまで言って言葉を切り、アランは目を瞑って息を吐く。
「あんなこと、大したことはない。そう自分に言い聞かせてはいるのですが」
アランは、そう言うと薄目を開け、マクシムの顔をぼんやりと眺めた。すると、マクシムは顎に手を当て、それから落ち着いた声で言葉を発する。
「自己催眠と言うやつですか。それで気持ちを誤魔化せるなら構いませんが」
それを聞いたアランは目を丸くし、力が抜けた様子で口を開けた。
「自分の気持ちを誤魔化し続けることは、薦められたことではありません。ですが、ここで暮らす以上、私はそれを止めることをしないでしょう」
そう言って息を吐き、マクシムは尚も話を続けていった。
「これからずっと、ここの担当と言う訳でも無いでしょうしね。どうしても無理そうであれば、ニコライ様にもお考えがあるでしょうし」
その話を聞いたアランと言えば、何かを思い出した様子で大きな瞬きをする。そして、彼はマクシムが口を閉じた頃合を見計らって話し出した。
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