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「そうですね。色々と考えるのは、ニコライ様の仕事なのでしょうから」
そう言ってマクシムの顔を見、アランは細く息を吐き出した。その一方、マクシムは静かに頷いてからアランの目を見つめる。
「ええ、私達はそれに従うのみです。そうしていれば、生きていくのに困ることは無いのですから」
マクシムは、そう言うと目を細めて口角を上げた。
「考えて疲れてしまう位なら、考えることを放棄するのも一つの手です。まあ、そうなってしまえば、傀儡の類に成り下がるとも言えますが」
それを聞いたアランと言えば、緊張した面持ちで唾液を呑み込んだ。
「さて、他に話すことも御座いませんし、調子が悪いなら休んでいて下さい。一人で出来る仕事であれば、私が済ませておきますから」
そう言って微笑み、マクシムはアランの目を優しく見つめた。対するアランは彼に礼を言い、二人は会話の無いまま時を過ごした。
その後、二人が呼び出されることは無く、残飯から作ったものを配り終えたところで実験棟を出た。地上階に戻った彼らは食堂へと向かっていたが、アランはそこへ辿り着く前に話し出す。
「すみません、マクシムさん。まだ食欲が戻らないので、軽く運動でもして腹を空かせてきます」
そう言って苦笑し、アランは気まずそうに頭を掻いた。対するマクシムは小さく頷き、それから自らの考えをアランに伝える。
「分かりました。くれぐれも、無理はなさらないで下さいね」
そう言ってアランと別れ、マクシムは食堂の方へと進んでいった。一方、アランは自室へ向かって行き、そこで素早く着替えを用意していく。
用意を終えたアランは運動場へ向かい、自らのロッカーへ着替えを入れた。そして、うっすらと汗が浮かぶ位の運動をした後、汗を流す為に浴場へ向かった。
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