86人が本棚に入れています
本棚に追加
「では、資料室から書物を借りる手順をお伝えします。私達の仕事には関係無いので忘れていましたが、説明する良い機会ですから」
そう言って笑みを浮かべ、マクシムはアランの返答を静かに待った。すると、アランは無言で頷き、口を開く。
「お気遣い有難うございます。部屋で読みたい本を見つけた時の為にもお願いします」
そう返すと、アランは柔らかな笑みを浮かべてみせた。対するマクシムはテーブルに手をついて立ち上がり、小部屋の出入り口へと向かい始める。この為、彼の動きを見たアランも立ち上がり、マクシムの後を追って小部屋を出た。
その後、マクシムは本棚から適当な本を選び、それを借りる手順をアランへ見せた。それは、首から掛けているカードを使用する単純なもので、子供でさえ出来る簡単な手順であった。
しかし、マクシムは手続きをした本を受け取らずに小部屋へ向かい、アランは不思議そうな表情を浮かべて彼を追う。その後、アランは小部屋に入ってドアを閉め、微苦笑しながら口を開いた。
「本を借りたのに、ここへ持って来なくて良いのですか?」
それを聞いたマクシムは頷き、それから貸し出しに関する説明を加える。
「ええ。あの手続きさえ踏めば、自室へ届けて下さいますから。仕事中に、自室まで戻るのは面倒でしょう? 仕事終わりに持ち帰るにしても、白衣を脱ぐ際に本を雑に扱いかねませんし」
そう言って目を瞑り、マクシムは尚も話を続けていった。
「本は無料ではありませんからね、専門書ともなれば値が張りますし。ですから、紛失を防止する為にも、担当者が自室へ届ける様にしたのだそうですよ。そうすれば、部屋へ戻る途中で紛失するリスクを減らせますからね」
それを聞いたアランと言えば、納得した様子で大きく頷く。
最初のコメントを投稿しよう!