尊厳

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「確かにそうですね。仕事を終えたら、自室へ戻るより前に食堂へ向かってもいますし。届けてくれるなら、うっかり紛失する危険も無くて安心です」  そう言って微笑むと、アランはテーブルに置かれた本を見やる。その一方、マクシムは片目を開けて口角を上げ、落ち着いた声で言葉を発した。 「閉鎖空間とは言え、管理を怠れば紛失することも御座います。ですから、その管理を怠ったり拒絶してはいけません」  そう言ったところで、マクシムは閉じていた方の目を開いてアランを見つめる。 「もし、怠惰によって本を紛失すれば、ニコライ様が決めたペナルティが課せられるそうです。まあ、滅多なことでは無くさないでしょうが」  それを聞いたアランは体を震わせ、声を抑えて話し出した。 「ペナルティ……ですか。想像するに、恐ろしいですね」  アランの話を聞いたマクシムは軽く笑い、それから椅子に座って口を開く。 「無くさなければ良いだけの話ですよ。実際問題、本を紛失して罰を受けた方は居ないようですし」  そう伝えると、マクシムは柔らかな笑みを浮かべてみせた。一方、アランは胸に手を当て、ゆっくり息を吐き出した。 「それもそうですね。万一、本の置き場所を忘れてしまっても、捜索すべき場所は限られていますし」  そこまで話したところで椅子に座り、アランは背もたれに体重を預けた。 「因みに、研究員以外は一度に二冊までです。一週間しても返さない場合は、呼び出されるそうなので気を付けて下さいね」  それを聞いたアランは頷き、淡々と言葉を発していく。 「呼び出されるのも恥なので、そうならない様に読み切れそうな本だけを借りますよ」  アランの話を聞いたマクシムは軽く笑い、自らの意見を口にする。
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