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「賢い方法です。自分のキャパシティ以上を求めないのは」
そう話すと机上の本を見、マクシムは幾らか言葉を付け加える。
「わざわざ借りなくても、ここで読めますからね。手続きや返却が面倒なら、やらなければ良いだけの話です」
彼の話を聞いたアランは頷き、マクシムの考えを受け入れた。その後も、二人は時折言葉を交わしながら本を読み、仕事を終えたところで地上へと戻る。そう言った日が何日か続いた後、アランは試しに一冊の本を借りる手続きを行った。
それは、童話でありながら残酷な話を集めた本で、殆ど読まれていないのか手垢はついていなかった。また、その表紙には内容に見合わぬ可愛い絵が描かれ、それは幼い兄妹の様である。
アランが本を借りたことに気付いたマクシムと言えば、それとなく何を借りたのか問い掛けた。一方、問い掛けられた者は微笑し、どこか気恥しそうに話し出す。
「借りたのは童話集です。どうにも懐かしくなってしまって。それに、幾らか話を覚えておけば、何時か孤児院のガ……いえ、子供達に話してやれるかなと」
それを聞いたマクシムは、微笑みながら言葉を発した。
「確かに、懐かしいですね。年のせいか、どう言った話があったかまでは、直ぐに思い出せはしませんが」
そこまで話したところで苦笑し、マクシムは小さく息を吐き出した。その後、二人は幾らかの会話を交わし、アランは夕食を終えた後で自室へ戻った。
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