尊厳

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「そう言えば、子供が無垢であるか否かを調べる為、果実と金貨のどちらか一方を選ばせた童話がありましたっけ」  それを聞いたアランは顔を上げ、無意識のうちにマクシムの顔を見た。 「確か、果実を選んだなら無罪。金貨を選んだなら有罪でしたか。貨幣の価値が分かるのならば、自分の犯した罪も分かる。その様な理由で、子供に判決を下したと」  マクシムは、そこまで話したところで肘をついた。そして、手を組んでそこに顎を乗せると、アランを見つめながら目を細める。 「他者の命を奪ったと言う事実に変わりはない。しかし、それが罪として裁かれるかは別の話です。私は性善説など信じてはおりませんし、それを逆手にとった犯罪が無いとも言えないでしょうね」  その話を聞いたアランは首を傾げ、呟くように言葉を発した。 「せい……ぜ」 「性善説。その昔、東の国で唱えられた説ですよ。私も詳しくはないのですが、生まれつきの性質は善である。そう言った説だと記憶しております」  マクシムは、そう説明すると軽く目を瞑ってゆっくりと開く。 「生まれついたものが善であれ、日々を過ごすうちに悪を知る。否定しようと思えばそれも可能でしょう。それでも、長い時を経ても残っている説です。軽視する理由も、存在しないのでしょうね」  マクシムは、そこまで言ったところで口角を上げ、アランの目をじっと見つめた。一方、見つめられた者と言えば、数拍の間を置いてから口を開く。
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