尊厳

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「確かにそうですね。長く残る考えには、それだけの価値がある。たとえ、それが万人に支持されない考えであろうと」  そう返すと、アランはマクシムの目を見つめ返した。 「生まれた時がどうであれ、子供が無邪気でいられれば良い。食べ物が得られるかを心配せず、不条理な暴力に怯えることもない。小さな子供は、大人の黒い部分を知らずに育てば良い。それは有り得ないことだと言われようが、それを実現する為に力を貸す。ただの偽善と言われようが構わない。それを実現する為に後ろ暗いことが必要なら、悪役をも演じてみせましょう」  アランは、そこまで話したところで片目を瞑り、大きく息を吸い込んだ。 「俺は、ちょっとした悪さ位なら子供を咎めたくはない。子供は子供だ。昔から語られる他国の論なんて、馬鹿だから理解すら出来ませんしね」  そう言って笑うと、アランは舌を出してみせた。対するマクシムは目を瞑り、頷いてから細く目を開いた。 「ええ。子供は子供であって、何倍もの時を生きた大人程の知識も経験もない。ですが、アランさん。ちょっとしたものではない悪さをした場合、貴方ならどう考えますか?」  そう問い掛けられたアランと言えば、僅かに眉を動かし言葉を発する。 「流石に、相手に大きな怪我をさせる等したら、怒らない訳にはいかないでしょう。そこに悪意が有ろうと無かろうと、繰り返すべきではないことを理解させねばなりません。かと言って、理由すら聞かずに責め立てることは、したく無いですね」  アランは、そこまで話したところで息を吐き、更なる言葉を付け加えた。 「ここまで話しておいてなんですが、子供には心身共に健康であって欲しい。それが根底にあるだけなので、色々な話を聞いたら細かい部分は変わっていくと思います」  そう言って苦笑し、アランは何かを誤魔化すように頭を掻いた。
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