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「成る程。確固たる目的の為ならば、細かいことは二の次ですか」
呟くように言うと、マクシムはどこか楽しそうに口角を上げた。
「ニコライ様が気に入るのも頷けます」
そう呟くと、マクシムは部屋に持ち込んだ本に手を伸ばす。
「さて、話を続けたらアランさんの考えが変わってしまいかねませんし、次の仕事まで口を閉じておきますかね」
マクシムは、そう言うと本を開いて読書を始める。すると、アランも彼に倣って本を手に取り読み始めた。
二人は、会話の無いまま共に時間を過ごしていた。とは言え、必要がある際には言葉を交わし、互いの意志を伝えていく。
その様な日が何日か続き、アランは資料室から新しく本を借りた。しかし、その本はアランにとって退屈な内容だったのか、彼は借りた翌日には返却をする。
そう言ったことが何度か繰り返されたある日、彼が借りた本には封筒が挟まれていた。アランは、それを怪訝そうに見つめた後で手に取った。
その封筒には宛名が書かれておらず、誰に宛てられたものかは断定出来ない。この為、アランは封筒を持ち上げ光に翳した。
しかし、封筒を透かしてみても、中に書かれているだろう内容は確認出来なかった。この為、アランは封筒を目線の高さに下げて溜め息を吐く。
「ま、うっかり挟んだままってことはねえだろ。そういう管理は、徹底しているだろうし」
アランは、そう呟くと封筒を開けた。すると、その中には綺麗に折り畳まれた便箋が在った。
その便箋をアランが開くと、一枚目の上部に彼の名が記されていた。この為、アランはどこか安心した様子で続きを読み始める。
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