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―――朝。
お日さまの光は横薙ぎに街を貫き、鳥たちへ突き刺さる。
断末魔に起こされ、鳥たちがぽつぽつと今際の言葉を紡ぐ。
あいにくと俺は鳥語なぞ理解できないので、何を言いたいかわからない。
昔のオンナに残した未練なら、悲劇のようで俺の趣味に近いのだが。
自室の西側に面した窓から、朝焼けに片づけられていく夜の帳を眺めるのが俺の日常。
ここから俺の思考はゆるやかに停止する。
視界が暗転したり、音が聞こえなくなったり、五感に支障は生じない。
だが、ただ感じるだけで、余程の刺激でもない限り、それが何か理解は出来ないし、認識できない。
そんな自分を煩わしく感じながらも思考は減速を続け、間もなく俺の認識は完全に停止する。
直前に見た窓の外では、別の家の窓に映る太陽がその赤い全身を映していた。
直後、聴覚が異常を告げ、世界が動きだす。
思考通りに駆動する身体を使い、耳につく異音の確認をする。
充電器に刺しっぱなしだったケータイから発せられるアラーム音が原因だった。
時刻を確認すれば、思考停止し始めた時間から数時間進んでいた。
なるほど、さっきは窓に映っていた赤い太陽も、今や白く衣装替えをして隣の家の瓦にその姿を湛えている。
内容物がガラスの万華鏡を光源ごしに見ているようで目が痛い。
早々に視界を窓から室内に切り替え、一ヶ月前に代替わりを果たした制服を見やる。
非常に憂鬱なことに、今日から俺は高校生なのだ。
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