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「よぉっしぃ、みんな揃ってるかぁ?」
そろそろ世界蛇を一冊読み終えるというところで、間延びした声が前面から聞こえてきた。
マンガをバッグにしまい、教卓の方へ意識と視線を向ける。
そこには、スーツをだらしなく着て、伸び放題の髪を振り乱しながら教室を見渡す貞子が居た。
お、スタイルはグラマーなんだな、体付きはエロい。
先生の観察はそこそこにクラスメート達を見てみると、文字通り俺以外の全員が、顔を思いきり顔をしかめて上体をそらしていた。
―――つまり、『ドン引き』。
「おぉ?どした、みんなして腐りかけの生ゴミの散らかった路地裏に居るみたいな顔してぇ?」
そりゃ目の前に井戸の底で怨念を貯め続けたドザエモンが、ビデオテープ通り越して映画のスクリーンから飛び出してくればな。
「ん、シカトかぁ?担任をシカトかあ?」
あ、やっぱ担任なんだ。
教室内はドン引きからのフリーズだし、ここは俺が動くか。
「せんせー、後続のクラスからの視線が痛いので、早く体育館にいきましょう」
ただでさえ氷点下だったクラス内の空気に、ブリザードが混じってるし。
「お、そか。じゃあみんな私に着いてこぉい」
そう言うと、名も知らない担任は後方確認もせずに教室をズカズカと出ていった。
空気だけなら南極もかくやと言う昭和基地のようなクラスから脱出(?)を果たしたのは、なんの因果かタロとジロの2頭さながらに、先生と俺の二人だけだった。
順番待ちだった一個後ろのクラスの担任と思しき男性教員がウチのクラスに、恐らく指示をするために入るのを横目に、俺たちは廊下を曲がった。
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