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彼女の髪の毛先が揺れるのをじっと見た。
朝一の授業、まだ高くない日の光が窓際に座る彼女のつむじに斜めに当たる。黒い光沢が美しい。
滑らかな髪の毛が彼女の耳にかかる。
「古河、どこ見てんの?」
「えっ、あぁ……いや」
隣の席の山田にペン先でつつかれ我に返った。
山田はおれの視線の先に目を凝らすが、変わったものはない。
一人の女性が座っているだけだ。
彼女は山田の興味をひくことなく、視線を逸らされた。
おれは目の前のレジュメに目線を下げ、またすぐに視線をあげる。
彼女は綺麗だ。黒く短い髪の毛に白い肌、ふわりとしたシャツ。今日は紫がかったタイツをはいていた。
彼女は、石田瑞紀という。
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