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昼休みも終わりに差し掛かり、気まずさはだいぶ消えた頃。そうだ、とふと思った。
コンビニのあの男、本当に大丈夫だろうか。
瑞紀から手を引くと言っていたが。おれと似ているという直感に頼ると、あまり諦めがいいほうじゃないかもしれない。つまりおれがネチネチしつこいということなのだが。
身元をバラすのは気が引けるが、少し釘を差した方がいいと思い、ジュースを飲んでいる瑞紀に話を切り出した。
「あの、そういえばストーカーはもう大丈夫?」
「あー、それはもう何もないよ。もう送り迎えは大丈夫かな」
そうか、と安心した反面寂しい気になった。もうあの男がつけてこないといいのだが。
「何かまた変わったことあったら相談して」
「ありがとう。長いこと無理に付き合ってもらって」
瑞紀が小さく歯を見せニッと笑った。幼く可愛らしい顔だとおれも頬を緩ませかけてふと思った。
彼は性別は「自称、男」らしいが、可愛らしいと感じることはだめなのだろうか。失礼に値するのか。男のおれが可愛いと言われたら、余程美人な女の子か天然以外には軽く苛立つかもしれない。
いや今それはいい。小さく頭を振り、子どもを見守る親の気持ち(と思い込んだ)で一言言った。
「この前おれが奢ったあそこのセブンイレブンは行かないほうがいい」
「何でだよ?あそこが一番近いんだけど」
「えと、酔った学生たまってたりするから。絡まれると厄介だし」
あ、焼肉屋の店員だし酔っ払いのあしらいはお手のものだろうか。もう少し別の理由が良かっただろうかと彼の顔を少し覗いた。
瑞紀が気をつけると頷くのを見てホッとした。
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