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翌日の3限は、石田さんと同じ講義だった。
山田と教室に入る際、中を見回したが、石田さんはいなかった。
ないとは思うが、もしや昨日のことがあって休んだのではと思いながらいつもの席に座った。
「そういえば、お前昨日の晩何があったの?やけに機嫌よく電話してきたけど」
「ふふふ、それはな…」
「あ、変態くんだ」
澄んだ声が横を通り過ぎる。平然と暴言を投げ掛けおれの数列前のいつもの席に座っていった。
山田はじ、と微妙な目をしておれの顔を見た。
少し失礼、と簡単に断りをいれて石田さんに寄っていった。
すました顔の彼女に長いまつげが綺麗に映える。鼻からゆっくり息をすると、今日は微かにシャンプーの匂いがした。……とりあえず落ち着けおれ。
「……石田さん、困ります。人前で変態呼びは勘弁して下さい」
「何で私の名前知ってんですか」
彼女はおれの方に視線を向けず、鞄の中からクリアファイルを出した。おれに興味はないようだ。これはこれで……いや、やめておこう。
鞄の中に小さなポーチが見えた。化粧品だろうか、それとも……と考えていると、つい鼻と口を押さえてしまった。
「……っと、にかく変態はやめて下さい」
「古河義邦、授業始まりますよ」
教卓を見ると教授がレジュメを配りだしていた。慌てて席に着かなければ、というか今名前を……!
「古河、顔にやけてるって」
「いや、そんなことないよ」
自分で説得力ないなと思いながら、にやける口元を押さえ続けた。
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