始まり

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放課後。 朝と同じように二人乗りをして帰る。 荷台で春の姿を見て、私は改めて自分たちが本当に双子なのかなと思ってしまった。 二卵性の私たちは、全くと言っていいほど容姿が違う。 風になびく春の茶色い髪はとても綺麗で。 茶色いロングヘアーに大人びた顔。とても美人だ。 それと相反するように私は黒髪のボブに童顔。二卵性とはいえここまで違うことに、自分たちでも驚いていた。 「てかさ、答えたぐらいで怒らなくてもよくない!?」 「まああの人は授業を妨げられるの嫌いだからね~。仕方ないよ」 そう言って春は慰めてくれているが、納得いかない。後ろで膨れている私に、当たり前だけど気付かずに話しを続ける。 「私は池田屋事件なんて起きてほしくないな。吉田さん死んじゃうし……」 機嫌の悪い私にしてみれば、今その話題はタブーだ。 池田屋事件といえば、新撰組が一番活躍した事件といっても過言ではない。 「ちょっと!吉田稔麿っていったら池田屋事件で沖田さんを殺そうとする人だよ?そんな危険な人ほっといたらいけなかったんだから。私、吉田稔麿大っ嫌い!」 「吉田稔麿は生きていたら総理大臣になっていたって言われるような人なのよ? 危険な人じゃないわ!! むしろ新撰組の方が危険よ! 次々と人を殺して……」 やっぱりこのことだけは譲れない。 いつもと同じことだと思っていた。 自転車を漕ぎながら春は、後ろを向き話しかけてくる。 「あのね吉田さんは……「春!前見て!!!」」
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