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ミヤモトがモニターを見つめて読み上げた。
「社会学者は…自殺は個人の意思じゃなくて
社会の意思としてとらえてまして、
人を自殺に至らしめる原因は
社会の政治的あるいは道徳的組織にあると…」
「……」
「リンゲルって人が…
自殺する前の心理抑制の傾向っていうのを三つ提示してまし…」
「もおいい!」
聞きたくない。うんざりだ。
「俺のためなのかもしれないが、
そんなもん聞いても仕方ない」
ミヤモトは何か言いたそうだったが、
今回も口をつぐんだ。それでいい。
ヤマベが残した映像をもう一度最初からチェックしていった。
だが、なにも手がかりになるものが見つからないまま、
十分ほど経ったろうか。
ミヤモトが突然口を開いた。
「これって、あのビルじゃ…?」
そのPCモニターには、
廃墟のような室内にいる若い男が二人映っていた。
その様子から、どうやら卯月マンションの一室にまちがいない。
「衝撃映像としてつい最近投稿されたものみたいですけど…」
モニターの中に並んでいる陽気そうな二人が、
こちらに向かって頭を下げた。
「ども!アリガトーございましたー!」
その二人の後方にある
窓のすぐ外側を-
ザッ!と-
落下していく人影。
「!」
それはヤマベにちがいない。
ヤマベが死んだときの映像なのだ。
だが、なにか違和感がある。
なんだ?
なにか妙だ。
その映像を繰り返し見た。
「あ…」
わかった-
「自殺じゃない…
落ちる前にすでに死んでる…」
落下していくヤマベの体は正面を向いているが、
首だけが真後ろを向いているのだ。
「落ちる前に首を折られてる…」
他殺だ。
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