4人が本棚に入れています
本棚に追加
「ダメ…かな?」
問いかける彼女の潤んだ瞳。
参った。
本当に参った。
僕は思わず彼女の手を引き、細い肩を抱きしめた。
突然の事に戸惑った彼女は、僕の腕の中で少し身体を固くする。
「そんなこと、いくらだってするよ。
君が僕に笑顔を向けてくれるのなら、いくらだって…」
所在なく宙に浮いていた彼女の手が、僕の服の裾をそっと掴む。
「……ありがとう」
礼を言うのは僕の方だ。
人を好きになる事を教えてくれた彼女に、僕が礼を言いたいくらいだ。
僕がこんなにも、誰かを愛しく思うなんて。
彼女がいなければ、きっと知らずにいただろう。
最初のコメントを投稿しよう!