知りたかった答え

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中に入ると突き当たりが墓地だった。 その中に兼森先生の姿を見つける。 ご両親? ……に、花束? あんなに鮮やかな、色とりどり。 いや、きっと違う。 考えなくてもわかる気がした。 あれは恋人捧げる花束だ。 そう思った瞬間、あたしの足はまた固まった。 踏み込んではいけない。 あたしの入れない領域だ。 視線だけで先生の後を追った。 急に先生の姿が見えなくなった。 きっとしゃがみこんだんだろう。 お参りしているのが、見えなくても目に浮かんだ。 あたしには長い時間に感じた。 兼森先生は長い時間、話し込んでいるのだろうか。 亡くなった恋人と…? 不意に兼森先生が立ち上がるのが見えた。 固まったままのあたしは、あっさりと彼に見つかってしまった。 先生は躊躇いもなくあたしに近づく。 心臓だけが早鐘を打つ。 目線は反らせなかった。 「ストーカーか?」 第一声がこの疑問。 否定は出来ない。 あたしはなんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだったのに、全然言葉が出てこなかった。 身体は固まったまま全然動かない。 「どうした?」 微動だにしないあたしを、おかしく思ったらしい。 不思議と、先生の表情が柔らかいような気がした。 ……聞いちゃいけない。 聞いちゃいけない。 そう思う事ばっかり頭を巡る。 でも、聞かずにはいられなかった。
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