寡黙なかれ

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「あっ…のさ…。」 「はい?」 「これ…。」 俺はそう言ってあの傘を差し出した。 「持ってるじゃないですか。」 「返そうと思って持ってきてた傘だから。」 ソイツは小さくため息をついた。 「今これ返してどうするんです…。どうやって帰るつもりなんですか?」 「……濡れて?」 「ばかですか?」 呆れたソイツをカッコいいと思ってしまうのは何故なのか。 「ほら。」 強引に傘を渡される。 「また使って良いですから!!」 そう言って立ち去ろうとする。 「あっ…待て!!」 「はい?」 「…名前…何て言うんだ?」 「名前…ですか?」 「あぁ…この間…聞いてなかったから…。」 「俺は、旭。式杜旭(シキモリアサヒ)です。」 「…あさひ。」 「はい。貴方は?」 「俺は鍵山夏人(カギヤマナツト)。」 「では。 これからもどうぞよろしくお願いします。」 そう言ってソイツ、旭は帰っていった。
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