部活という名の第二話

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二人で教室に戻ると案の定というかなんというか俺たちは注目を浴びてしまった。 それはそうだろう。俺が特定の誰かと一緒に長時間居ることなんていままでなかったことなのだから。 しかもその相手が女性なら余計に注目を集めてしまうのも分からなくもない。 別れの挨拶も無しに俺は自分の席に戻った。 これ以上騒がれるのが嫌だから。 そして騒ぎは徐々になくなり、先生が来る頃には静まっていた。 騒ぎらしい騒ぎは何一つ起こらずに放課後になり、俺は一人で静かに教室を出た。 のはずだったのだが出る直前に華菜が俺に話しかけた。 ありえない、俺は心で毒づきながら振り返った。 「郡山くん、一緒に行こ?」 この子は気づいてないのか? 俺らが一緒にいると奇怪な目で見られていることに。 まぁいいか。もう話しかけられてしまったのだから。 「ああ、いいよ」 嫌な顔一つ作らず俺は頷いた。 昼休みに感じた胸の痛みは、この子の悲しそうな顔を見たからに違いない。 ならば華菜の困ったような悲しい顔を作らせてはいけない。 俺達は教室を出て、部室のある部活棟に足を向ける。 その間に浴びた注目はものすごい量だったのは間違いない。 「なぁ華菜。教室では話しかけないでくれないか?」 「え? ……なんでですか? 嫌ですか?」 「話しをかけられる事は嫌じゃない」 「じゃあ、なんでですか?」 「注目を浴びたくないんだ。基本目立ちたくないんだよ」 俺は迷子で泣いている子供をあやすような感じで言った。 優しく優しく、諭すように。 「私は……郡山くんと喋りたい。……ダメかな?」 今度は困った顔でも悲しい顔でもなかった。 少し勇気を振り絞ったような強気な顔つきをしていた。 俺はその表情に押されてしまった。 「はぁ、分かったよ。でも休み時間全てとかはやめてくれ」 「何回まで……いい?」 何回なら納得するんだ、この子は。
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