5人が本棚に入れています
本棚に追加
意識がボーと夢を見ているそんな感覚の中、音が聴こえてきた。
ふ、と顔を上げる。ごみごみとした混雑の中、ホームに駆ける人。友人や恋人と話す声。どうやら知らないうちに、駅まで来ていたみたいだ。
「早く……帰ろ」
手で顔を拭く何も考えずにするとまた
――音?
あぁ、妙に落ち着くこの音
ゆっくりと優しく撫でるように流れる漣ような曲。包み込む風の中をゆったりと聞こえる囀りのような歌。
周りを見渡した。
――帽子を深く被った女の子が一人で弾いて歌ってる姿がある。
その歌に誘われるように動いていた足は、その娘の前で止まりいつしか聴き入っていた。
最初のコメントを投稿しよう!