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意識がボーと夢を見ているそんな感覚の中、音が聴こえてきた。  ふ、と顔を上げる。ごみごみとした混雑の中、ホームに駆ける人。友人や恋人と話す声。どうやら知らないうちに、駅まで来ていたみたいだ。 「早く……帰ろ」  手で顔を拭く何も考えずにするとまた ――音?  あぁ、妙に落ち着くこの音  ゆっくりと優しく撫でるように流れる漣ような曲。包み込む風の中をゆったりと聞こえる囀りのような歌。  周りを見渡した。 ――帽子を深く被った女の子が一人で弾いて歌ってる姿がある。  その歌に誘われるように動いていた足は、その娘の前で止まりいつしか聴き入っていた。
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