出会いの季節

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 蓑和眞はバスの後部ドアから乗り込んだ時、違和感を覚えた。  いつもの時間のいつものバス、塚沢口経由桜林行きと白地に黒字で書かれた方向幕、全てが同じなのに、やはり何かが違う。  後部扉の前の椅子に座る。  違和感の正体が気にかかるが、いずれわかると諦め携帯を開いてディスプレイを見る。 “おはようございます。このバスは塚沢口経由桜林行きです。まもなく発車しますので、もう少しお待ちください” (あっ)  流れてきたアナウンスに眞は気付く。 (女性なんだ)  違和感の正体は、運転手さんが男性ではなく女性だったから。  明るくて優しい声。  アナウンスを一回聞いただけなのに、運転手さんの人柄が手に取るように分かる。
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