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ズボンに火が燃え移る前に、左足を強く踏み込んで一気に問題児に距離を詰める。そのまま問題児の顔を殴ろうと思ったのだが、奴は後ろに小さく跳んで僕の接近を許さない。
元々僕と問題児の距離はそこまで空いていなかった事もあり、攻撃が通るとすっかり思い込んでいた。攻撃が当たれば問題児はよろけるだろう、その隙に追撃をすればいい。そう考えていた。本当に僕が考えていたのはそれだけだったので、攻撃が当たらなかった場合の事なんて全く考えてない。喧嘩なれしていない僕にそこまで瞬時に考えろってことの方が無理。
問題児は距離を取ると同時に、ズボンのポケットに手を突っ込んで何かを取り出した。奴が取り出した物は小さくて何なのか確認できなかった。問題児は手の中の何かに火を点けて、先程より一回り小さい火球を作り出した。奴はそれを僕の胸辺りを狙って投げてくる。
火の元になった物は、僕に当たる前に燃え尽きていて確認できなかった。火も空中で若干分解していて、僕に当たる前に火の大きさはそこまで驚異とは感じられない大きさになっていた。
それでも僕は咄嗟に左手を火が当たるであろう箇所で勾玉を構える。勾玉は火を吸収したが、本当ならまだこの手は使いたくなかった。でも僕は頼ってしまった。かざすだけでどんな能力でも吸収するこの石を。
「俺に有利な能力かと思ってたが無効か吸収なのか……」
口角を上げて笑っているが、興味なさそうに問題児は言う。
あの程度のその場しのぎの攻撃に手の内を見せるのはマズかっただろう。
問題児は僕と一定の距離を保ったまま、次も同じ様な攻撃をしてくる。先程と違うのは火の大きさ。ズボンのポケットから取り出した物は紙屑だと分かった。ポケットの中身が分かったのは、火を作る際に奴が出しそこねて落としたからだ。
今回奴が作った火はとても大きい。1mぐらいはあると思う。それを奴は僕に投げつけてくる。
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