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「大君!」
……………………。
「ほら、無視しないで、ねぇ~。」
「すみませぬ、人違いではありませぬか。」
敢えて視線を合わせずに真っ直ぐに前を向きながら、歩く。
「あら、何て事言うの!?この子って子は!?」
俺は軽く溜め息をしたところで、「ああ、分かったよ。ごめん。だから、早く帰らせてくれや。」と言ってこの子を宥めた。
つもりだった。
「それは無理な相談なんだなぁ。大君に「人違い」とかって言われるのって結構傷付くんだよ。」
無理だった。
茶髪のセミロングを靡かしながら、この子は、俺の前に現れた。
名前は、高城綾(タカギアヤ)。俺の幼なじみである。身長は、150cm代の小柄な体格な彼女は俺が中学二年になった頃には、俺を見上げながら話していた。
「そろそろ、クラスの誰かと仲良くしたら?皆、実は大君と仲良くしたいって思ってるんだよ?」
こいつは、俺と同じクラスで、俺と唯一、一番喋っていて、一番俺の事を知っていて、分かっている奴である。
「あ、そう。俺は仲良くするとか、そういうのとか、どうでも良いんだって、前にも話したろ?だって良いじゃん?クラスで孤立してるわけじゃあるまいしさ。休み時間はお前と喋っているし。」
「そーじゃなくて…!」
「そうじゃなくて?なんだよ。お前まで俺をお説教しにきたのか?」
「そー…じゃなくて…!」
下を向きながら、少しもじもじしながら、綾は何か言葉を発しようとしている。
俺は、学校に何しに行っているかと問われたら、こう答えると思う思う。
「将来のために仕方無く、渋々勉強しに行っている。」と。
親に無理矢理入れられた高校だが、卒業まではどうこうしようがない。
将来は、どこか適当な会社に就職し、今とあまり変わらない生活を送っているだろう。
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