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「はあ、はあ」
木枯らしが吹く空に、ぼやけて浮かんだ夕日に照らされ、赤くその色を変えた廊下を、ぱたぱたと運動シューズで音を立てながらひとりの少女、もとい岸本 唯(きしもと ユイ)が歩みを進める。
学生生活特有の、放課後のグラウンドから聞こえる野球部の声や、校舎に響く、管弦楽の演奏に耳を貸す事なく、彼女はただ目的の場所へと足を急がせていた。
「ノドカ、もう着いてるかな……」
どうやら、彼女は同じクラス友達、泉美 のどか(いずみ ノドカ)との待ち合わせ場所に向かっているようだ。
彼女の息の上がり方から見ると、何か急ぎの用事でもありそうな雰囲気である。
彼女達は、性格が全く違う。得意科目や、仲のいい友達や、好きな食べ物や、男の趣味も、もちろん違う。しかし、彼女達には、ひとつだけ、彼女達しか共有していない秘密があるのだ。
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