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【荊姫】
深い森の奥深く
彼女は静かに眠っていた
幾多の荊が彼女を包み
行く手を阻む
どうやら荊のお陰で彼女は守られているようだ
遠目に見る姿は、清らかで、安らかに
美しい眠り姫
荊は彼女を守っているのか…
荊の呪いなのか…
時折目覚めた彼女は
聡明で、見惚れんばかりの笑みを溢す
荊の檻に囲まれているのに
その棘の辛辣さも消し去る温かな表情
触れてみたい
触れてはいけない
曾て人形写真家がこう語っていた
「陵辱―それは不毛な愛を活かす唯一の手段であるのですから。
誘惑したのは、キャロルではなくアリスだ。
挑発したのは、イリナではなくエヴァなのだ。
人形の本能はバージンの喪失を願う。
恋月姫の人形は、人形としての生理と、己を支配する絶対的少女としてのアイデンティティの狭間で揺れ動いているのです…」
不意に彼女と重ねてみた
けれど、彼女は人間だ
彼女?彼?
荊が邪魔して姿を隠す
いつか
いつの日か
眠りを醒ます者が現れるように…
我はそっと
踵を返した
招待状が来ないと拗ねる魔女は寂しがり屋
シンデレラに意地悪をする姉妹はやっかみ
白雪姫に毒リンゴを贈った魔女は羨ましかったんだろう
魔女は姫で
姫は魔女なのかもシレナイ
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