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序章
新西暦512年 6月7日 木曜日
天ヶ瀬学園都市、総敷地面積は旧東京都の約3倍、人口は約700万人。その内、20歳未満が約400万人、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、大学院など、合わせて1300校以上が集中する世界最大規模の学園都市である。
この学園都市は、中学生から全学校が全寮制となる。
『赤の他人と共同生活する上で1番大事なのは、互いに互いを信頼する事』
だそうだ。要するに、信頼し互いに助け合う事の大事さや、人に頼られる頼もしい社会人になってくれ、と言う願いが込められているらしい。
“情けは人の為ならず”と言う諺があるくらいだし、将来の自分に繋がると言う事だろう。
不良B「おら!何見てやがる!!」
通行人A「……」
夕方、人通りが多くなるこの時間帯で、堂々と建物の間にカモを連れ込み、恐喝行為に及んでいる不良グループ。
信頼関係を築いてほしいと言う大人達の想いと裏腹に、こんな事が日常茶飯事で起こっている。
勇斗「はぁ…」
日は傾き、空を朱色に染め上げている。そんな空を見上げてから、ガクッと肩を落として溜め息をつく。
恐喝される男子学生「お、お金なんて無いですよ…」
不良リーダー「はぁ?んじゃそっちの可愛い娘をくれよ」
男子学生の後ろに隠れていた女子学生の肩がビクっと震える。
怯える女子学生「ひぃっ!」
男子学生「な、何故ですか!?」
不良C「あん?金持ってねぇなら変わりをよこせって事だよ!」
そんな理不尽な要求が聴こえてくる。
勇斗「はぁ…」
俺はもう1度溜め息をつき、恐喝が行われている現場へ足を向けた。
不良B「ん?」
ちらちら見ている通行人達を威嚇していた赤髪の男がこちらに気付き、ガンを飛ばしてくる。
不良B「おい何見てんだよ?俺達に何か用がある訳?」
勇斗「用事と言うか、買い物の途中でな。この道、近道なんだよ。通してくれないか?」
不良B「はぁ? おい聞いたか?!ここを通りたいんだってよ!」
壁に寄り掛かっていた茶髪の男が、こちらに歩み寄ってきた。
不良D「ここ通りたきゃ通行料出しな」
顔を近付けてくる。どうやら脅しているらしい。
勇斗「通行料が必要だなんて初めて聞いたな」
不良B「特別に今日は必要なんだよ。有り金全部置いてってくれりゃ通してやんよ」
汚い笑みを浮かべながら、左肩に手を置いてきた。肩に置かれた手を軽く払い除ける。
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