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「――――つう事があったんだがな」
時刻は昼飯時、教室内では幾つかのグループに分かれて団欒している感じだ。
机の端を付き合わせ、真ん中に三角形の空間が空くような形でそんな過去話をしてみた。イチ押しの恥ずかしい思い出を披露したのだが、俺の向かい側に居る両名女子の反応は実に冷ややかなもので、
「なぁ、私はすべらない話を求めたんだが、誰がそんなだだ滑りの失敗談を披露しろと言った?」
口を尖らせながらそう言うのは俺から見て左側の席に座る天酉百舌(あまどりもず)。
黒髪ロングで体は細いし背は高くて胸はデカい綺麗系女子なのだが、顔付きは生まれつき目が細くて周りからは不機嫌そうに見られその上人当たりがあまり良くないという、いわゆる残念美人な奴である。
「そうですよ京五(けいご)さん。この前話してくれたラブホテル未遂事件と同じくらいドン滑りしてますよ」
と、百舌の言葉に続けて話した事もない嘘を捏造して来やがったのは、名を道端千草(みちはたちぐさ)と付けられている奴だ。
くりっとした目に童顔じみた顔は幼さを残しつつも艶やか栗色の髪が妙に大人びて見えたりして、また百舌にも負けないプロポーションを持った間違いなく美少女であるのだが、……口調からして礼儀正しそうに見えて内容が全く礼儀正しくない残念な娘である。
そしてコイツの一番重要な点と言えば何を隠そうロボっ娘なのだという事。……うん、俺も詳しくは知らないがなんかロボっ娘らしい。
そんな2人を相手に男1人で相手をしている状況ってのは、美女2人に囲まれ爆発しろ対象にノミネートされるのか、または残念な女に絡まれる哀れな高校生に分類されちまうのか……。まぁよく分からん。
だが、なぁ。
「何だコイツ誰か連れ込もうとしやがったのか?」と何故か食いついた百舌と、「本人に聞いた話ですと、土下座したのに帰られたとか」と嘘を盛っていく千草。
絶対貧乏クジ間違いねぇよなぁと思っちまう。羨ましがる輩居たら立候補しやがれ。
つーか、なんでこいつら本人目の前にしてヒソヒソ話で盛り上がってんのかな? 百舌の方は若干顔赤めながらこっちを見下した顔で見やがるし、オイロボっ娘いい加減にしやがれ!
これ以上不名誉な嘘を吹き込まれるのは俺でなくとも許せねーし、仕方無いが別の話題を振って止めてやる。
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