卒業・桜・嘘

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桜が咲き、舞散る季節。 私は君と向かい合っていた。 君を見ているだけで泣きそうで俯き、手をギュッと握り締めていた。 いつ切り出そう…。 そう思っていたが、先に切り出したのは君だった。 「先輩、ごめんなさい…。」 そう言った君は俯いていてどんな顔だったのか、よく見えなかった。 「謝らないでよ…。」 そう言った私の声は震えていた。 認めたくない…。 君の隣に居れなくなるなんて…認めたくない。 でも、あの子の隣で幸せそうに笑う君を見たとき思った。 隣にいるのは私じゃなくてあの子なんだなって。 私じゃないんだって…。 本当は悔しかった…。 なんで私じゃないの? こんなに大好きなのに…。 でも、君を困らせたくないから。 「大好きな人と一緒になれて良かったね…おめでとう。」 今出来る、精一杯の笑みで言うよ。 …だから、そんな困った顔をしないでよ…。 「…本当にごめんなさい…。」 止めてよ…。 笑って?君を困らせたいわけじゃないんだから。 「先輩泣かないで下さい…。」 そう言って私を抱き締める君。 泣いてなんかないし、もう私は君の彼女じゃないんだよ。 「…ダメだよ…。こんなことしたら。」 私はそっと君を押し返す。 本当は、抱き締めていて欲しかった。 けど、もう彼女じゃないから…。
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