卒業・桜・嘘

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私は、涙を拭うと俯いていた顔をあげ、君の顔を見る。 「…今、幸せ?」 そう、君に問いかけた。 君は、ちょっと考えて言った。 「幸せだよ。」 本当に幸せそうな顔をして言った。 …もう、諦めなくちゃ。 だから、私は最後にこの言葉を言う。 「…幸せなってね。もし別れたりしたら怒るから。」 笑顔で言う。 今回の笑顔は普通にできた。 君は、ちょっと困った顔で笑うと、言った。 「もちろん、幸せになるよ。」 君は私の頭に手をおいた。 そして 「…ありがとう。」 君は私の頭をグシャグシャに撫で、私の唇にそっとキスをした。 ほんの一瞬だった。 君は、少し離れたところで私の大好きな笑顔を浮かべて言った。 「…卒業おめでとう、先輩。…バイバイ。」 そう言って去っていく君。 ただただ、遠ざかっていく背中を私は見ていた。 君は振り返らない。 そして、完全に見えなくなった。 「…大好きだよ。」 私は、君が差って行った方を見てもう二度と君に伝えることのない言葉を呟く。 「…ありがとう。」 私は、伝えることができなかった感謝の気持ちを呟いた。 今までの感謝も込めて。 …君のことが大好きでした。 私も、後ろを振り返ることなくこの場を立ち去った。 …君と初めて出会ったこの桜の樹の下から。 end
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