入学式・チョコ・桜

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時期は6月。 私がこの高校に入学してから2ヶ月が経ち、中学とあまり変わりのない生活を送っている。 …ひとつだけ変わったことがあったが。 それは 「ねえねえ、チョコいる?」 毎日のように話しかけてくる人がいるということ。 …彼はよく飽きないわね…。 毎日毎日、私のところに来ては、あの無邪気な笑顔を浮かべて話しかけてくる。 そして、彼はかなりの甘党らしくいつも、飴やチョコを持ち歩いている。 「なあなあ、チョコだぜ?いらないなら、俺が食べちゃうよ?」 ちょっと拗ねたように言う彼が可笑しくて、つい私は笑ってしまった。 「…やっぱり、笑顔の方がいいな。あ、チョコ食えよ。」 そう言って彼は、私の手にチョコを握らせてきた。 そして、私の手からチョコをひとつ手に取り言った。 「…これ、俺のオススメだから。甘党じゃない誰かさんでも食べられると思うぜ。」 先程とは違った柔らかな笑みを浮かべて、彼は去っていった。 …何なのよ…。 私は、彼がくれたチョコを口に入れた。 「…甘いわね…。」 口の中にはやっぱり、チョコ特有の甘さが広がる。 どこが、甘党じゃない誰かさんでも食べられるよ…甘過ぎる。 でも… 「…たまにはチョコも悪くないわね。」 甘ったるいチョコの味に顔をしかめながら、私はまたチョコを口に入れるのだった。 私の為に探して来たのであろうチョコを見ながら。 …あの笑顔は反則よ。 つい食べちゃうじゃない。 私は微笑むと、彼と同じチョコの匂いに包まれるのを感じながら、次の授業の準備をするのだった。 end
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