月夜・紅葉・出会い

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某観光地の某旅館。 そこには、秋になると紅葉が綺麗に見える露天風呂があるということで有名な場所だった。 私は疲れを癒すために旅行に来ていたのだった。 今の私は、露天風呂に入って、火照った身体を冷ますために旅館の周りを歩いていた。 ここからでも十分綺麗な紅葉が見える。 旅館の周りに植えられたもみじを月明かりが照していて、昼間に見るよりも一層綺麗に見えた。 私は、その景色に見とれてしまった。 私が上を向いて歩いていたからだろうか。 前からくる人に気付かずぶつかって転んでしまった。 「…いった…。」 「すみません…前を見てなくて。…怪我はありませんか?」 男性が手を差し出してきた。 私は、差し出してきた男性の手をとり立ち上がった。 私は、ぶつかった男性に謝ろうと思い男性の顔を見た瞬間…。 …ドキッ…。 思わず胸が高鳴った。 彼もお風呂上がりなのだろう。 しっとりと濡れている髪に月明かりが反射しキラキラと光っている。 そして彼は私を見ていた。 柔らかな笑みの中に微かな心配を浮かべながら…。 「あ、大丈夫です。すみませんでした。」 私は、この胸の高鳴りを認めたくなくて、素っ気ない態度で返してしまった。 …私のバカ…。 「良かったです…女性に怪我はさせたくありませんからね。」 そう言い、微笑んだ。 …先程より胸が大きく高鳴った。 …もう隠せないわ… どうやら、彼に一目惚れをしてしまったようだ。 「怪我がなくて良かった。…じゃあ、僕は行くね。」 そう言い、男性は去っていった。 あの柔らかな微笑みを残して。 「あぁ…もう…当分、忘れられないじゃない…あの笑顔…。」 しばらくして私は、胸の高鳴りを抑えるため、また歩き出したのだった。 end
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