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しかし次の瞬間には、アクトはほとんど無傷なまま爆風の中から飛び出し、魔法を放った少年へと詰め寄っていた。
その光景をスクリーンから見ていた女性は、視線はそのままでルクシードに言葉を投げる。
「そういえばさっきも似たようなことがあったんだけどさ、アクト君、最近になって能力発現したんだよね?どんな能力? 見る限りだと無力化系?それとも対象変化とか......?」
その言葉を聞いたルクシードは、まるで自分のことのように得意げに説明をする。
「フフン、残念ながら不正解です。 あれは火球を消したんでも他の対象に移し替えたんでもない、ただ火球を"掴んだ"んです」
「掴んだ?」
流石に即座の理解が出来なかったのか、視線を一度ルクシードに移すと女性はその真意を訪ねた。
「そう、掴んだ。 恐らく掴んだ火球を地面にぶつけたかそのまま握り潰したんだ。だから爆風はあがってるけどアクト君自身は無傷なんだと思います」
「はぁ......理解はしたけど能力自体は随分珍しいね、そんな話題入ってこなかったけど」
「前例が無かったですからね。 似た能力はあったけどどれも違う、僕自身よく分かってないんで能力発現申請はまだしてないんですよ、あはは......」
そこまで聞くと、女性は呆れ顔で腰に手を着けて続ける。
「あははってあんた、申請してないからさっきからアクト君が攻撃受け流す度に他の研究者連中がざわついちまってるよ」
見れば周りの白衣を着た者たちは、アクトが火球を無傷で捌いた辺りから2,3人で話し合ったり、手元の参加者リストからアクトのページに視線を落としたりと少々騒ぎが起こっていた。
「すいません。 これ終わり次第申請するんで」
ルクシードも反省の色を出し手を頭に置いて何度も平謝りをしている。
そんなルクシードにため息を一つつくと、その女性は顎に手を着け視線を落とした。
「しっかし珍しい能力だね。 魔法なら全て掴めるの?」
「現在調べてる最中ですけど、氷や岩は言わずもがな、本来実体として存在しない火や雷なんかも掴めてましたね。 発現部位は両手、能力発現中は常に両手に青白い綺麗な光が纏う状態になるんですが、この光自体に耐性があるのか、魔法に触れていても手が傷つくことはないですし、魔法関係無く刃物なんかも無傷で触れますね」
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