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三人で帰宅することは徐々に減り、次第に僕と、二人の関係は軽薄になっていった。
僕は僕で、心から二人の幸せを願っていた。だからこそ僕は自ら二人から距離を置くようにしたのだ。
二人も二人で僕の気遣いを察してか、それなりに楽しくやっていた。
そんな日が続いたある日の事だった。
駅のホームで電車を待っていた。
行き先表示板を見上げると、次は特急電車の通過だった。
通過かよ…。などと思っていたら、後ろから
「わぁっ!!」
「うわぁっ!って…堺!!お前…何してんだよ?」
「いやぁ、驚かせようと思って。たまたまお前見かけてさ。佳英も一緒だから久しぶりに三人で登校しね?」
堺は身ぶり手振りを付けながら話す。これは堺の癖だ。
「まぁ…良いけど…お前ら気まずくないか?」
なんたって事ないよ、と堺と佳英は笑った。
久しぶりの感覚だ。懐かしいな。三人で登校なんて。
ぶぉぉぉ、と風が吹いて満開の桜が一気に空を舞う。アスファルトの地面がピンク色に染まる。
「帰りマシスコ寄ってかね?」
「良いねぇ!!佳英はどうする?」
「買い食いはいけないんだぞ~!でも、ちょっとやってみたいかも。」
マシスコとは、近所にある喫茶店の事だ。真下スコッチという店名だから、略してマシスコ。
三人が出会ってまもない頃がが思い返される。
じめじめとした空気を顔に受けてチャリンコを飛ばす。
「雨降ってきそうだな」
「笹木辺!!折りたたみ持ってないか?」
「一応…あるけど。」
「ナイス!!佳英、何も聞かず俺らを入れてくれ!!」
その瞬間、大粒の雨が降ってきた。
「二人とも仕方無いな~」
僕は左肩、堺は右肩がほとんど濡れてしまったけど。
蝉が鳴いている。
じーじこじーじこじーじこ。
「あじぃ~溶ける…」
チャリンコを押しながら堺が言う。
「死ぬ…!」
白い夏服のカッターシャツに、汗が滲む。
「坂は…っきつい…よ…!」
長い上り坂を登る三つの影が重なったり、離れたり。
そして。
夏が終わりに近づいた頃、二人は始まり、僕ら三人は終わった。
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