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そんなこんなで僕はなんとか16年と7ヵ月生きてきた。
たくさんのは人の心のなかを覗きながら。
大きな事件もあの三件を除けば無かったし、それなりの人生送ってきたつもりだ。悪いこともあんまりせず、真面目に生きてきたつもりだ。
生きてきたつもりだったんだけどなぁ…。
ピロロロロ、と突然携帯が鳴った。
電車内の視線が一気に僕に集まる。
すいません…と周りに会釈しながら僕はポケットの中で鳴り続けている携帯を手にした。
「もしもし。」
少し小さめの声で電話に出る。
「うんやぁ!久しぶり、元気だった?」
携帯から加工音声が漏れる。よく刑事ドラマなんかで、誘拐事件の犯人が身代金を要求するときのあの声だ。ま、声の主は分かりきっているのだが。
「なんの真似ですか、乃木さん。」
「いやぁ…バレちったか…。」
「こんなことするの、僕の知り合いでは、あなたくらいしか居ませんから。」
呆れた声でそう言い、僕は、露骨に大きなため息をついてみせた。
「そうでしたか…。そうそう、お仕事ですよ!!」
やっぱり…。
「どんな?」
「毛和町のマンション。立て続けで住人が自殺したんだと。」
乃木は先程とはうって変わって落ち着いた声で話す。
「基準は?」
「君に任せる。ま、場合によっちゃぁ…」
「殺っちゃいなよ、ですね。」
「アッハハ、やっぱ君には敵わないね~真実を見る眼なんて中二にも程があるよ(笑)いやいや、馬鹿にしてるんじゃないからね?実質、君にはほんとお世話になってるし。しばらくしたら僕も行くから。あ、学校には連絡しといたから。しっかり追試受けろよ~ただでさえ出席日数足りてないんだからさ~」
「誰のせいだと思ってるんですか!?それに今のはあなたの口癖から予想したものですので。ま、仕事はちゃんとしますよ。」
「おぉ~頼むよ~阿麻井 真人゛仮゛君。」
「自分だって偽物のくせに。」
「言うようになったね~頼もしいよ。一年前とは大違いだ。」
「馬鹿。一年と2ヶ月だよ。」
そう言い残して、僕は電話を切った。
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