0人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな日が続いて、やがて僕らは中学生になった。
地元の同じ中学で、同じクラスに僕とカエはなった。
「同じクラスだね!」
そう笑いかけるカエに僕は
「最悪だ…。」
なんでよー、と頬をぷくりと膨らませカエは顔を近づける。
思わず僕は
「やめろよ!!」
怒鳴ってしまった。
「え…。あ…ごめん…。ちょっと嫌だったかな?」
困惑気味のカエに僕は、「別に」と無愛想に答え、教室を後にした。
それからだ。僕とカエの間に妙な溝が生まれたのは。
思春期というか、なんというか。
僕は幼馴染みの女子と仲が良いと思われたくなかった。親と一緒に居るのを見られたくない、みたいな感覚と似ている。
それであんな態度を取ってしまったのだ。
その事を後悔する日はすぐにやってきた。
カエが。
急激にモテ始めたのだ。
成績は中くらいだが、優しい性格で健康的な笑顔。そして何より品のある顔立ちをしていたカエは先輩後輩関係なく色々な男子から告白をされるようになった。
それでもカエはその告白をずっと断り続けていた。
帰りの自転車置き場でカエと会った。
お互い一瞬だけ気まづい雰囲気になったあと、いそいそと帰りの準備に取り掛かった。
変な空気が流れる。
そんな空気に耐え兼ね、気づけば僕は口を開いていた。
「久しぶり…だな。最近どうなんだよ?」
「え…。あ、うん。まぁまぁ、かな。真人は?」
「まぁまぁ、だな。」
「まぁまぁって何よ?」
「そのままそっくり返してやるよ。」
えっへへへへ
カエが。
カエが笑った。
なんだろう。その時物凄く胸の奥がじーんと熱くなった。喉がカラカラに渇いてくる。
「なんで笑うんだよ。」
「だって…。なんかさ。こういうの久しぶりな気がして。」
その笑顔が余りにも可愛くて僕はその時悟ってしまった。
そうか。
僕はもう、カエには届かない。
カエが手の届かない所へ行ってしまったのだと、ようやく気づいた。
「何でさ。お前告白断り続けてんの?」
「うーん…。タイプの人が居ないんだよね。」
「タイプねぇ…。贅沢者め。」
「放っといて。それに…」
「それに?」
「私、好きな人居るし。」
え…マジかよ!!
「でもね、気付いてくれないの。全然気付いてくれないの…。鈍感なのかな?それに、私の手の届かない所へ行っちゃったみたいだし。」
ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…。
桜の花びらを引き連れ、春の生暖かい風が僕らの間を吹き抜けていった。
最初のコメントを投稿しよう!