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「そうだ。一緒に帰らない?真人が嫌なら別に良いんだけど…。」
「堺ってのも一緒で良いなら。」
「うん!三人で帰ろ!!」
「おーい、阿真井~ワリィ、待ったか?って、お?これはこれは、クラスのマドンナ、ササキベさんじゃないですか!!」
「こんにちは。わたしも一緒に帰っても良いかな?」
「そりぁ!!勿論!!」
三人で帰るというのはなんだか変な感じがしたが、社交的な堺はすぐにカエとも打ち解け、最後の方になると最早僕そっちのけでカエと堺の二人だけで会話をしているようなものだった。奇数の法則。誰か一人が余るのは仕方のない事だ。
ま、話の内容といっても
「ササキベさん、どんな字を書くの?」
「笹木辺 佳英だよ。」
と、こんな感じだったのだが。
それからというもの、この三人で帰る事が日常的になった。
そうこうしているうちに夏が来た。
そして、この季節は僕の人生を狂わした季節になった。
僕と堺はパンをかじりながら窓際で校庭を眺めていた。
すると、堺がおもむろに口を開いた。
「お前さ、笹木辺の事、どう思ってんの?」
「え?どうって?ただの幼馴染みだよ。」
「そか。」
いつになく真剣なトーンの堺の声に僕は嫌な予感がした。
「俺さ。笹木辺の事、好きかも。」
かもって…。
窓から吹き込む風、揺れる新緑、なびく髪に、風通しのよい半袖のカッターシャツ。
そのすべての時が一瞬だけ止まった。
「え…?」
「え?じゃねぇよ。俺は、笹木辺の事が好きなの!!だからその…。笹木辺の、幼馴染みであり俺の親友であるお前には相談しておこうと思って…。」
「相談って…何の?」
ゴクリ、と生唾を飲み込む。
「俺、今日アイツに告るから。」
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