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「や、やっと辿り着いたぁ………」
青森辺りの内陸部に建設された『第一居住地』の南門前。
そこで長い黒髪を後ろで一纏めにした少女が息を切らしながら呟いていた。
全体的に整った外見は土や汗で汚れた程度では損なわれていない。
逆に妖艶な雰囲気が出ているほどだ。
とはいえ、少女自身は外見には気を配らない性格である。
黒髪を後ろで一纏めにしているのも『邪魔だから』という理由からだ。
いや、だったと言ったほうがいいか。
昔、面倒臭がって放置し続けた結果、長くなった黒髪を一纏めにしていたら『あの人』に「おっ、そっちのほうが可愛いな」と褒められたのだ。
それからというものあの時と同じ状態を保つように心がけているのだ。
……………あらゆることを面倒だと言う理由で手を抜く彼女が。
「あの人京都と奈良の境での『試合』で活躍したっぽいしな。傍に行くためにはチョチョっと選手になって、でっかい結果残さないとなぁ」
そう言った少女は南前の見張りにあいさつしてから『第一居住地』へと入っていく。
『世界単位』で戦争中とは思えないほど警備が甘いが、こんなんでもばっちり『管理』された今の世界ならなんの問題もないのだ。
「おー、流石は居住地。金かけてるなぁ」
キョロキョロと金属っぽいナニカで作られた建物を見る少女。
「さってと。それじゃあ選手団に入団しよっと」
そうは言ってもどこに行けばいいのかさっぱりわからない。
なので、
「とりあえずでっかいビルに行ってみよーっ!」
中心にある二つのビル。
赤のビルと青のビル。
そのどちらかに行ってみることにした。
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