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「良かったー。 有り難うございます!」
俺の返事に安心したのか、彼女の泣きそうだった顔が、日溜まりのような笑顔に変わる。
可愛い。
思わずそう呟いてしまいそうな程、彼女の笑った顔は魅力的だった。
そんな彼女を目の前にした俺の頬には、自ずと、紅が灯る。
俺は照れから逃れる様に、彼女から顔を背けた。
「司君…?」
その行動を不信に思ったのか、一之瀬の口からは心配そうな声が漏れる。
「な、なんでもない。ところで、何処に行けばいいんだ?俺、お前の家知らないんだけど…」
俺は、一之瀬の家を知らない。
ある程度の場所は知っているが、特に仲が良いわけでもない奴の家の詳しい場所を知っているわけは、勿論、ないのだ。
俺が一之瀬のストーカーでもをしていたなら話は別だが、生憎そんな趣味は持ち合わせていない。
「あ、えっと、此処に来てください!」
そう言った一之瀬は、俺の上着のポケットに、一枚の紙を忍びこませてきた。
どうして口頭で言わないのだろうか?
……まぁ、いいか。
「分かった。」
「ま、待ってますからね? 絶対に来てくださいよ…!」
彼女は最後にそれだけ言い残し、逃げる様に去っていってしまった。
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