尽くす男

5/12
前へ
/130ページ
次へ
――――10年前 「今日転校生が来るらしいよー」 「どんな子だろうね」 教室は朝から今日やってくる転校生の話でいっぱいだった 小さな田舎町にある小学校だったので、都会からやってくる転校生に、みんな興味津々だった 僕も友達と転校生の話をしていたが、それほど関心があるわけでもなかった 「おーい!みんな席に着けー」 担任の先生が教室に入ってきたので、みんな急いで自分の席に着いた 「今日は前から言っていた通り、転校生を紹介するぞー」 【転校生】という言葉を聞いて、ザワザワと教室がざわめく 「入ってきなさい」 先生の声の後、小柄の女の子が入ってきた 「・・・上濱実咲です。よろしくお願いします」 ペコッと女の子はお辞儀をした 髪が長く、大きな瞳をした可愛らしい女の子だった 先生が「みんな仲良くするように」と言うと、教室から「はーいっ」と言う声や「よろしくー」という声が行き交った その時その女の子は安心したのか、ニコッと笑った 僕はドキッとした その笑顔があまりにも輝いて見えたから・・・・ そのまま僕は、ずっと彼女を見つめていた きっとあの時、すでに僕は実咲に恋をしていたんだと思う
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加