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僕は近くのスーパーで林檎を買って、足速に実咲の元へ向かった
703号室
見慣れた病室を開けると、外を眺めている実咲が見えた
「今日はいい天気だな」
「巴くん!今日は来るの早いね」
「大学が早く終わったからな」
僕は袋から林檎を取り出した
「林檎買ってきたんだ。もう食べるか?」
「ごめんなさい。いつもいつも・・・・」
「いいよ。俺が勝手に買ってきてるんだし」
「本当にありがとう。いつも巴くんは私によくしてくれてるのに。私は・・・・」
「いいんだ。焦らないで、ゆっくり思い出していけばいい」
実咲は申し訳なさそうに、小さな声でもう一度「ごめんなさい」と言った
実咲の記憶の中から僕が消えてから、どれくらい経ったのだろう
今まで一緒に過ごしてきた時間も思い出も
あの日、一瞬にして消えてしまった
【いつまで、この生活が続くのか・・・・】
一抹の不安が胸をよぎる
【もしかしら、一生記憶が戻らないかもしれない】
僕は気を紛らわすように、林檎を剥き出した
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