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―普通でよかったんだ―
俺は何より普通がよかった。
普通に受験勉強して受かったり落ちたり
普通に友達作って喜怒哀楽しながら他愛のない日常を送って
普通に彼女作ったり、部活かなんかに熱心になるみたいな青春して…。
そんな人生でよかったんだ。
変化のない日常といっても面白い変化ならいいとして、漫画みたいな非現実的なことがポンポンとやってくるような、そんな人生はいらない。
そう…思っていたのだが。
「なんだよ…なんなんだよ!!こんな人生はよー!!」
俺にもやってきてしまった。
そんな非現実的、非常識的なサプライズがやってきてしまった。
目の前にはマンガのような展開が広がっているのに、俺ときたら制服に鞄といった超日常的じゃねえか。
こういうシーンならマンガやアニメなら
俺の手にはものすごく斬れそうな剣や、何でも守れそうな盾が握られていて、そんな非現実的な状況と知恵と勇気で戦っていくんだろうよ。
でも…俺には…俺には。
「ちくしょー!!!!」
俺は力の限り叫んだ。
声が枯れようと、どうなろうと構わない。
胸が張り裂けるくらい息を吸ってその息を声に変えた。
やはり俺の体は脆い。
漫画みたいにうまくはいかない。
そのまま俺の体は地面に崩れ落ちた。
そして目も開ける力を失うと同時に俺は一つ思いをはせる。
―次目覚めるときは、普通の日常が待っていますように―
決して敵わない願いを俺は呟きながら、死んだように深い眠りについた。
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