第1章》原因

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それは、小春日和というには少し早いある日のことだった。 そこに桜を両脇に聳える一本の道があった まるでその道を囲む桜はトンネルのようにそびえ立っていた。 春だというのに太陽は元気で夏かというほど暑苦しかった。 少しは有給休暇を与えてやってもいいと思うのだが。 その光を浴びた桜は溢れるばかりの桃色をしていた。 そこに群青色の制服で身を包み、向こうから歩いてくる一つの影。 その影は鞄を背中に引っ掛けるようにして持ち、この道を歩いてきた。 ストレートの髪で前髪(左右の髪は分かれている)をピンで留め、その顔は高校生としては整った目鼻立ち、だがなんとも他人としてはすごく絡みにくい細い目つきをしていた。 「この地球に隕石でも落ちてきたらいいのに」 彼の名は「石川白波」 高校二年生で16歳。10月生まれなのでまだ17歳ではないことは明らかだ。 趣味かといえば、 「非日常探し」 全く何を言っているのか解らない。 質問の答えにはなっているのだが。 特技はと問えば 「円周率を一万桁暗唱」 意外と凄い奴だったことに俺は驚愕した。 今の一般人でもそこまでの知能があるのだろうか。 こんな風に少しイカれたやつなのだが、頭脳は校内ベスト4にランクインしているらしい。 何故こんな奴のパラメータ配分がいいのだろう・・・。 もしも神様ってのがいたなら俺はすかさず「神様、人間に対するパラメータ配分間違ってんじゃねえかバカヤロー」といったあとに一発打ち噛ます。 だが何故俺がこんな奴―白波について知っているかといえば… 「白波…そりゃないぜ」 桜の木陰から声をかけたのは何を隠そう、この語り手の俺だ。 無口なやつではない(俺がただそう思ってるだけなのだが)のだが、奴は俺の一言を無視するかのように俺の目の前を通り過ぎた。 通り過ぎ間際に、俺に何か意味ありげな笑みをみせたかと思うと、なにもなかったかのように去って行った。 そして俺はもう一度、今度は呟くようにため息交じりに言う。 「白波…そりゃないぜ」 相変わらず反応なし。 効果はいまひとつであります隊長。 俺は仕方なく奴の後を追った。
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