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「榊さん、どこから来たの?」 「何で引っ越してきたの?」 「家族は? 何人?」  隣の席に座る転校生を生き埋めにするかのようにして、クラスのほとんどの男女が集まっていた。その中心にいる彼女は、自己紹介のときと同じ笑みを浮かべながら答えていた。 「おい、坂本」  坂本、は俺の苗字だ。はい、と返事をして声の主、ナカセンの方へ向かう。 「お前、榊に校内を案内してやってくれないか?」  そう言ってナカセンはニヤリと笑い、俺の耳元に顔を近づける。 「お前、榊に一目惚れしただろ」 「はあ?!」  驚いてナカセンを見ると、やっぱりな、という顔をした。俺は誤解を解こうと、慌てて口を開く。 「違います。どこかで見たことあるような気がして見てただけで……!」 「そうだよなぁ。やっぱりあんな容姿だと、お前みたいに女に興味なさそうな奴でも惹かれちまうかぁ。まぁとりあえず、席も隣にしてやったんだし、校内を案内して仲良くなれや」  俺の言葉を無視してそんなことを言うと、あんな美人はめったにいないからな、とか、俺があと十年若ければな、とか意味のわからないことを言ってから、ナカセンは教室を出ていった。  俺は小さくため息をつくと、いつの間にかいつものメンバーがそろっている自分の席に戻った。時計をチラリと見ると、一限目が始まるまであと十五分ほどもあった。時間的には問題ない。
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