0人が本棚に入れています
本棚に追加
――分かった。分かってしまった。…この二人は初めから、符を張っていたのだ。だから寒くなんてなくて。
「昔っからいつもいつも二人だけでそうやって…!!」
幼い時分からよりの反応を面白がって内緒で何かしら二人だけでやっているのだ。…今だって―!!人がどれだけ寒い思いをしたと…!!
ぶるぶると拳を怒りに震わせる。
「まぁまぁ。もう何ともないんだし良いじゃねぇか」
「…またお前が発案者だろーが、晴明」
ポンと肩にあげられた手を恨めしげに見やる。
「ははは。バレた?」
「すえがこんな事考える訳ねーだろうが」
「お? …ま、そうだな」
口端を歪めて笑うと、さて、と晴明は奥へ視線を投げかけた。
「ここじゃあ風も入ってくる。も少し奥に行くか」
**************
――タ…ケ……テ…。アイ…タ―イ…。
「誰…?!」
「……っ!!」
今の…声は……。
キョロキョロと辺りを見回したユキは、そこが見慣れた自分の住処であることに気づいた。
「あれ…? 私、確かよりの家に」
遊びに行っ、て…?
――そこでふと違和感を覚えて思考が止まる。
(――いつもより目線が高い…?)
そろりと視線を落として……ユキの失った声は文字通り悲鳴へと変わった。
「キャーーっ!! ご、ごめんなさい!!」
あわあわと慌てて手を彼の頭から退ける。さっき起きた際、思い切り手をどこかへ叩きつけた記憶がある。――つまり自分は彼の頭を思い切り叩いてしまったのではないだろうか。
「あ、あの…! もう降ろしてくれて大丈夫です……っ!!」
パッと背から飛び降りたと同時に彼に頭を下げた。
「本当にごめんなさい!!」
「…いや、構わない。それよりもあんたが無事に目覚めてくれて何よりだ。…悪い所はないか?」
無表情ながらも掛けられた優しい気遣いの言葉にドキリとした。
「…あ、は、はい。…あれ? でも私どうして……」
首を傾げると、かいつまんで彼が説明してくれた。
「詩代と台所に居た際、突然倒れたんだ。…熱でな。でも晴明が病の原因である符は取り除いたからこれ以上は酷くならないはずだ」
「……そうなんですか…」
(――そんなことが)
「ここには俺とより、晴明が送りにきた。……しかし、少し良くなったからといって無理はするなよ。妖怪とはいえまだ安静にしていなくてはいけない身体だからな」
「……はい」
優しい言葉を素直に受け取って小さく微笑む。
最初のコメントを投稿しよう!