空逢

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恋をしていないと言うと嘘になる。 陸上部のマネージャーをしている私は 先輩に恋心を抱いているのだ。 でも、友達がしているような激しい恋愛 ではなく、ただの片思いをしているだけ。 窓の外の景色がなんだか綺麗に見えるのも 先輩の事を考えているからだろうか。 けれど、告白する勇気なんてないし、 どうせ彼女がいるだろうし、 こんな私が相手にしてもらえるわけがない、と 考えてしまう可愛げのない普通の女。 ………このまま、終電まで行こうか。 しかしそんなことなど、私にはできない。 真面目だけが取り柄の、可愛くもなく 勉強もそこそこの普通の女なのだ。 陸上部のマネージャーをしているのだって もともと陸上競技を見るのが好きで だけど私は運動音痴だからせめてマネージャーでも、と思ったからで、 男目当てなんでしょ、と言う 3組の、長距離担当の高橋を好きな女の子たち が言うのには程遠い。 賢人なんか、女の子と出会いもないだろうに 幼稚園からしている野球に夢中で羨ましい限りだ。 夢中になることもないのに 恋も簡単に諦めてしまう私は、どうなんだろうか。
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