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タンタンタンと鋼鉄製の階段のプレートがおとをたてる。
ふと、少年は足を止める。少年は二階分階段 を下ってきた。余談だが、屋上は五階にあ り。四階を除くその他の階が1~3年生の教室となっている。1年が3階で、2年が2階といった風に、年を重ねる毎に階は下っていく。
少年は3階の廊下、つまりは1年の教室となっている階の1-1、1-2。順に過ぎ、そし て、1-4と書かれた綱製プレートを見つけると、窓から見える、だらけた生徒達を横目に教室に遠慮なしに入る
窓際の一番前の席から自分の財布を取り出す。
そして、また、教室を出ようとしたのだが。 同じ教室から聞こえた声に思わず足を止めてしまった。
「今日も屋上でサボりですか」
不意にかけられた声は、少年、銀にとって強く馴染んだ声であり、もっとも近しい少女である。
珍しいライトグリーンの髪と真紅色の瞳。
幼くも優しい眼差し、発達した四肢はとても少年と同い年だと思わないほど妖艶な雰囲気をその身に漂わしている。
蚕家(さんけ)千夏、それがその少女の名。
「その通りでございます、ちなお嬢様。」
彼女の名前はちな、ではなく、千夏なのは周知だが、少年は敬愛を込めてちなとよんでいる。 お嬢様と呼んだのはただからかうためだったが。
「怒りますよ、ギン。」
彼のお嬢様は気に入らなかったのか、元の大きな瞳を細めて少年。ギンの事をにらんでいた。 ギンは直ぐに訂正を入れたのだが、ついでと思い、少しからかうことにする。
「あんま怒ると、男子にモテないぞー黙ってりゃ可愛いんだからさ、ちなは」
特に喋ると駄目なわけではないが。
「結構です。」
キッパリと切った。
少しは考えると思ったのだが、千夏は間髪いれず即答する。しかし、この程度補正をかけるばかり、追い討ちをかける。
「いいのか?モテなくなって」
「どういう意味でしょうか、私が好意を寄せられて喜ぶとでも?」
少なくとも、千夏の勘に障る言い方はしたことはないと思うのだが、実際、どうやら千夏にはモテたいという欲求が無いのか、それを話題にしたのが勘に障るらしい。
ならば、別の話題から。と、初めの目的を忘れていることに気付かずギンはさらに話題を無作法に広げていく事にする。
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