空っぽの黄金

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―――なんだか、いい天気だな。 空を見上げながら少年はそんなことを考えた。地平線まで伸びる青空には雲ひとつない。 まるで、空が白いキャンパスのようだ。少年はそう思った。 そして、自分と同じ白が空を埋め尽くすより、空が青い方がいい。自分が雲になったように思えるから。 なんて、少年は絵空事を頭の中にぼんやりと浮かべながらスクッと立ち上がる。 もう昼だ。太陽が真上からまた東の空に沈む ように動き出すのだろう。 なんの皮肉か、少年の向かう方角も東だった。 ・・・自分は太陽にまとわりつく雲だな。 それはそれで面白いと、少年はクスッと笑み をこぼし、自らの食欲を満たし行くために自ずと足が進めていた。 ───少年は学校の屋上にいた。 特に理由はない。特別、聞かれたとしてもただ、居心地がいいと受け流している。 といっても、夏の昼間は日差しが光線とな り、肌を攻撃するので、今日のように昼すぎに退散する。 以上で分かるだろうが、少年は学校と呼ばれる場所に在籍する学生だ。 高校のランクを言うなら、ハイクラスである。 名門だ。 高校と呼べば早いのだろうが少年はこの言い方を気に入っていた。 親近感があり、適度に緊張感がある。と矛盾したことが少年にとっては気に入った理由かもしれないと少年に近しいある少女は語っていた。 少年は名を銀牙と言った。 超人銀牙。 そうかいて、とびひとぎんがと読む。 なにやらファンタジーもののライトノベルの超能力を持った主人公のようじゃないか。さもなければただの名前負けだ、そして少年は後者に近い。 日本にして珍しい銀髪、背175程にして軽く腰にもしなりを持った彼はそれなりに整った顔をしていた。切れ長の目、長いまつ毛、肉がほどよくついた中性的な顔つき。 そんな彼はほどほど充実した毎日を過ごしていた。 精神的に麻薬にも劇薬にもなり得るちょっとしたフラストレーションを抱えながら。
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