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ドアがノックされた。
ドジコがドアを開ける。
「お待たせ~毎度~」
と、頭に三角巾をかぶり割烹着姿の娘がワゴンを運んできた。
瀬織の顔を見ると
「オウ、やぱりアネサンさんいたね!シバくです!」
といいながらパチンと手を叩いた。
瀬織が突っ込む。
「いや、それを言うなら『しばらくです』ね。」
そして刃平の頭をグリグリして、割烹着の娘に紹介した。
「このボウズが今日から入った………あ、まだコードネームつけてないな…
仕事柄、本名で呼ぶのはご法度だから、なんかつけなきゃ。」
瀬織が刃平を見る。
刃平は嫌な予感がしたので釘を刺す。
「姉さん、まともな名前を期待します…」
「そうねえ~、オタクで馬鹿で種馬だから…
とりあえずバカオタク種馬、
長いから『タク』にしましょうか。」
「えー、オタクは否定しないけど。なぜ僕が種馬?」
割烹着の娘が
「タクさん、ごヒキョウに。」
と頭を深々と下げた。
刃平は渋々、頭を下げた。
「それは『ご贔屓に』です。よろしく。」
瀬織が補足する。
「彼女は姫 杏花(ジ・シンファ)、忠国から留学にきた大学2年生、みんなは姫って呼んでる。
近くの喫茶大正堂のアルバイトよ。」
刃平は違和感を感じる。ここまでくるには門から始まりセキュリティが4重にもなる。
一般の喫茶店アルバイトが入れるものなのか?
それはドジコの次の説明で合点がいった。
「大正堂のおかみさんは、研究室の名誉相談役のジイサンの奥様です。
彼女はジイサンの古い知り合いの孫だそうです。」
姫は
「皆さんツァイツェン(再見)ね!」
と言い出て行った。
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